公開講座「量子コンピューティング人材への道」実施報告

2023-12-26

かごしま県民大学中央センターと第一工科大学が共催する、令和5年度「かごしま県民大学とことんまなぶー講座」の一環として、航空工学部の古川靖教授が「量子コンピューティング人材への道」を実施しました。

10月から12月にかけて、

  1. デジタルトランスフォーメーション(DX)の課題
  2. 量子時代のコンピューティングと社会
  3. 量子ICT人材育成プログラム

の3回シリーズで、量子コンピューティングの必要性とその学び方を解説しました。DXを推進する際に課題となる「組み合わせ爆発」や「環境・エネルギー問題」を克服するために量子コンピューティングの実用化が期待されていることや、社会活動を最適化して持続可能な発展を実現するためにAIと量子技術がいかに有効であるか、一般の人々が量子コンピューティングを本格的に学ぶための環境(Qiskit等)をどのように構築するか、などを説明しました。

量子コンピュータが爆速で計算できる理由は、「量子重ね合わせ状態」や「量子もつれ状態」などの“量子状態”を利用して計算するからですが、ミクロ世界の量子状態は非常にデリケートで、熱などの雑音によってすぐに壊れたりズレたりしてしまい、エラーを発生させてしまいます。最終的な目標は、このエラーを訂正することのできる「誤り耐性型汎用量子コンピュータ」≒「理想の量子コンピュータ」を開発することです。しかし、まだまだ大きな壁が立ちはだかっているのが現状です。

このように理想の量子コンピュータはすぐには得られそうにありませんが、昨今のGPUの性能の向上により、量子コンピュータのシミュレータ(疑似量子コンピュータ)の性能が飛躍的に向上してきています。とりあえず今は、これをオンラインで使って量子アルゴリズム(量子コンピュータの使い方)の開発を目指してみませんか?というのがこの講座のメッセージです。将来この分野で日本が世界をリードできる可能性は、まだあると思っています。

(社会・地域連携センター)