公開講座「量子コンピュータ」の実施報告
2020-08-26
8月22日(土)、かごしま県民交流センターで「量子コンピュータ」をテーマに公開講座を実施しました。かごしま県民大学中央センターが主催する「かごしま県民大学とことんまなぶー講座」として開催した一連の講座の最終回です。
近年、量子コンピュータや量子暗号など、「量子技術」関連のニュースが取り上げられることが多くなりました。今回は、これらの物理的な原理、開発の現状、将来期待できることなどについて解説しました。
通常のコンピュータでは、0と1からなるデジタル情報を処理しています。これに対して、量子コンピュータでは、0と1だけでなく、0と1の「重ね合わせ」の“量子状態”を処理します。0と1の重ね合わせ方は無数にあるので、処理できる情報量が飛躍的に増大します。これが量子コンピュータの計算パワーの根源です。
また、量子状態はコピーが作れない(「量子クローニングの不可能性」と呼ばれる原理的な制約がある)ので、原理的に盗聴不可能な量子暗号を作ることもできます。
しかし、量子状態は連続的に変化できるためノイズの影響を避けることができず、量子コンピュータがノイズによる「誤り耐性」を獲得するためには、量子誤り訂正理論を実装しなければなりません。この技術的なハードルは高く、実用的な量子コンピュータができるとしても、あと数十年はかかると言われています。
とはいえ、「量子技術」は次世代の産業技術革命として期待されており、各国の覇権争いが起こりつつあります。日本でも研究のすそ野が広がっていくことを期待します。
(航空工学科/社会・地域連携センター)