熊本地震現地調査レポート(建築デザイン学科)
2016-06-10
熊本地震現地調査レポート(建築デザイン学科)
2016-06-10
熊本地震現地調査レポート
2016年熊本地震につきまして、被災された皆様にお見舞い申し上げます。
6月2日より、本学の学生が熊本地震の現地調査に参加しました。以下はその際のレポートです。
熊本地震現地調査レポート
建築デザイン学科
中島 直希
申 吉峰
川満 義貴
6月2日(木)からの3日間、本学古田先生と横浜国立大学の中尾先生の引率の下、私達、古田研究室ゼミ生3人、計5人で熊本地震の現地調査に行ってまいりました。
今回の現地調査は、木造住宅の被害調査を主とし、建築物の被害状況の把握、及び被害原因等を、熊本市,宇土市,益城町全域及び南阿蘇村周辺など、特に大きな被害を受けた地域を中心に実施しました。図1に調査地域を、図2~4に3日間の調査ルートを示します。
図1 主な調査地域(国土地理院電子国土webより)
初日は本学を朝出発し、図2に示すように、熊本市内→宇土市内(宇土市役所及びその周辺)の調査を行いました。
まず、今回の地震の調査を行う前に、熊本県立大学へ行き、日本建築学会調査の腕章をお借りするとともに、被害状況の概要を確認し、熊本市内の調査に入りました。木造住宅の被害状況を確認していくと、壁にひび割れの損傷はないものの瓦が落下している被害が多く、ブルーシートで雨漏りを防いでいる建物がかなり見受けられました(写真1~3)。これは、瓦が落ちる場合の横揺れであれば壁の損傷が確認できるはずですが、壁の損傷がなく瓦のみが落下しているため、地震動の縦揺れが大きかったのではないかと思いました。現地で3回ほどの余震を経験しましたが、下からの突き上げのみといった感じを受けましたので、詳細な検討は必要ですが、そう感じた次第です。また、かなり古い木造住宅の壁にはひび割れが入り、外壁が剥がれ落ちている部分もあり非常な危険な状態でした(写真4)。
図2 初日調査ルート
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その後宇土市の宇土市役所に到着すると、市役所周りの建物とは明らかに違い、地震の被害が非常に大きく、ほとんどの柱にせん断破壊がみられ、特に4階部分は写真4からも分かるように、柱が脆性的に壊れ、層全体が陥没していました。しかし、市役所周辺は大きな被害は見受けられませんでした。何らかの構造的な問題を非常に感じました。
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2日目は、熊本市内を再調査し、益城町→南阿蘇村河陽地区の調査を行いました。そのルートを図3に示します。
熊本市内の再調査を終え、益城町に入った途端被害が大きく、写真7~9のような新耐震以降と思われる建物も倒壊しており、益城一体の地盤がかなり影響しているのではないかと感じられる被害でした。
図3 2日目調査ルート
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益城町の調査を終え、次の目的地の南阿蘇村河陽地区に向かいましたが、目的地に向かう道中は土砂崩れなどで通行止めになっている道路が何か所もあり、通行できる道路が制限されていました(写真11)。通行できる道を大回りして集落につくと、アパートなど複数の建物が倒壊していました(写真10~12)。益城町同様、地盤がかなり軟らかい印象を受け、それが影響しているのではないかと感じました。
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最終日は阿蘇神社へ行き、その後、益城町を再度確認しました。そのルートを図4に示します。南阿蘇河陽地区を抜けると被害は小さくなっていきましたが、阿蘇神社に到着すると、神社は倒壊し、石造などは崩れ落ちていました(写真15~19)。しかし、本殿他壁板が入っている建物は被害が少なく(写真20)、神社周辺の建物の大きな被害も見受けられなかったため(写真21,22)、この倒壊の原因として、屋根の重量が重いにもかかわらず耐震要素で重要となる壁がなかったからではないかと思いました。
図4 最終日調査ルート
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今回の地震による建物被害は、震度は同じようでも地域により被害の差が大きいという印象を受けました。特に益城町と南阿蘇村の被害は甚大なもので、木造住宅の古い建物はほとんど倒壊、新しい木造住宅も倒壊、傾きなどの被害が見られ、地盤ごと崩れている印象を受けました。巨大地震による被災地の被害状況を実際に目の当たりにして、地震の本当の恐さを再認識させられました。
日本にいる限り、地震はどこにいても発生する可能性があり、現在の木造住宅が巨大地震を受けた場合、「安全・安心」とはいい難いことが分かり、巨大地震の恐怖を感じました。
下の写真は2日目の宿泊先のログハウスで中国の留学生2人が母国の味を再現し、美味しい料理を作ってくれたときの写真です。
夜になり寝静まったころ、森のくまさんが出没したと思ったら古田先生の○○○でした。非常に厳しい調査でしたが、楽しいひと時もありました・・・。
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