川口尚毅助教の査読付き英語学論文が国内誌に掲載されました

2024-07-16

共通教育センター川口尚毅助教 (専門:言語学/英語学; 担当科目: 英語科)が執筆した論文 “Unearthing the Multiple Roots of Participial Constructions” (「分詞構文の多重起源を掘り起こす」)が国内誌『近代英語研究』第40号に掲載されました。川口助教の今回の論文掲載は、国際誌English Linguistics第40号に続き、今年2回目です。

川口助教の今回の論文の独創性は、次のような点にあります。すなわち、英語教育の現場で耳にしない日がないほど卑近な構文「分詞構文」は、(i)ラテン語からの翻訳借用にまで遡及可能であること、(ii)過去の英語への翻訳借用を具現化させたメカニズムが複数あること、(iii) (ii)の意味で分詞構文には複数の起源―多重起源―があって、現代英語の分詞構文は、異なる複数の由来/借用動機を統合した存在である、ということです。

なお、川口助教による今回の論文タイトル“Unearthing the Multiple Roots of Participial Constructions”にも注目されてください。実のところ、本タイトルは掛詞になっています。unearthには①‘発掘する事’と②事物を詳らかにする事の意とがあります。加えて、rootには①‘根’という意味と②出自/由来という意味とがあります。すなわち、川口助教の狙いとしては、現代英語の分詞構文の‘根’に当たる出自/由来を‘発掘したり’明らかにしたりする、というものがあります。

川口助教によると、現代英語をよりよく理解するためには、歴史的観点が不可欠であるとのことです。歴史的観点を取り入れることによって、現代英語に見られる問題解決に向けた新たな突破口が見つかってくる可能性もあります。いうなれば、現代英語を2次元的に―面的に―みるのではなく、いわば4次元的にみることになります。現代に見られる問題解決の糸口を、過去にも求めるというスタンスが大切であるとのことです。

前回上梓された本記事冒頭の論文と今回の論文とを合わせる形で、分詞構文の全体像が一定程度明らかにしたことになります。前者では、現代英語の分詞構文を大木のイメージに例えました。そのうえで、現代英語の分詞構文を、その典型性の程度に応じて、(a)「幹」、(b)「枝」、(c)「小枝/末梢」に分類し、(a)から(c)へと文法が拡張してゆくという趣旨の主張を行いました。他方後者では、(a)から(c)に(d)「根」 (= 歴史的出自)を加えました。そうすることで、いわば大木のメタファーの完成をみました。

川口助教の過去の一連の研究は、本学教員紹介ページからも参照できます。川口助教は、分詞構文やその関連構文以外に、前置詞も研究しています。その研究を活かして、今後は、語彙の意味を多角的に研究してゆくことを目標としています。

(共通教育センター)